私のまたの名はハカイダー 汚名返上の巻

いのちの星 地球 ogotama  Bon apeetit en 2023

子どもの頃、いくつかあだ名があったのですが、その一つが「ハカイダー」!

誰もいない2階の居間で1人、ネジ回し片手に、何か機械を分解するのです。時に目覚まし時計、時になんだったか・・・。

とにかく、「これはどうなっているのだろう?」、「どんな風に出来ているのだろう?」と、触れずにはいられず、手にとってみると、ネジに気付き、次々に開いていくのです。1人無心になって、また一つ、また一つ。

だんだん、複雑になって、もう息をするのも控えるほどに根を詰め、その都度、戻す方向を頭に叩き込み、また次の何かを分解していく・・・。必ず自分で戻せるようにと慎重に、一つずつ、また一つと。

残念ながら最後までやり遂げた記憶がありません。

途中、必ず家族の誰かに見つかってしまい、大概それは2つ上の姉でした。「おかあさ~ん、けいちゃんがね~!」の甲高い声で現実に引き戻され、暗転。その後どれどれ、わいわいガヤガヤ、母、父、祖母も次々に寄り集まって、その惨状を見て、みんな呆れ顔。

こっぴどく叱られ、「もう二度と物を壊さない」と約束して、以降慎ましく禁欲生活を送るのです。

でも、またある日、誰もいない好機が訪れて、今度こそは誰にも気付かれないうちに全てをやり遂げようと思い、こっそり分解を始める。またも見つかる、そんな繰り返しが複数回ありました。

そしてついた名前が「ハカイダー(破壊ダー)」。なるほど、困惑している家族にとっては言い得て妙、しかも当時大流行の仮面ライダーを模したアイデアネームで我が家では、ちょっとしたブームに。

何か誤って壊してしまっても、「しょうがないよ。けいちゃんはハカイダーだもんね~」の感じで、一時期私の別称になっていました。

当の私は、ひどく悲しく、甚く傷ついて、次こそは誰にも見られないで完遂するぞと心に誓うのです。くだんの通り、必ず見つかって、それも空しく、もう二度と分解しないと、分解癖をお蔵入りしました。

この4月から晴れて自由の身となり、毎朝慌てて出勤する必要がなくなり、朝時間が豊かになりました。早朝散歩、朝ヨガ、ざっと掃除、朝食などのルーティンを済ませた8時にTVをつけてNHK朝ドラ「らんまん」を見るのが楽しみになっています。

かねてから植物愛好家の私は、その世界にぐんぐん引き込まれ、主人公と同化して見入っています。子ども時代のエピソードのひとつ、「懐中時計分解の巻」には驚きました。大変高価だった懐中時計を手に入れて喜ぶ番頭さんに拝み倒して貸してもらい、主人公が1人部屋で隅々まで分解・解明していくのです。私も息を止めてそこに居て、彼が全てをやり遂げた時、自分も長年やり残していた宿題をようやっと終えたように思い、清々しました!

20数年の在職中、あちら・こちらで、とっちらかして皆を呆れさせてきた私。仕事をしている内に、「これこそが仕事」と更なる仕事を見いだし、一心不乱に始めてしまうのが常。「それは仕事ではありません!!従来の仕事をしてください」と諭され、「あぁ、まったやっちまったよ、とほほほ・・・」の結末に。

「私らしい私」が居ることで周囲に波風をおこして迷惑をかけてしまうのが申し訳なく、天然のハカイダーぶりに自分でもため息をつく長い日々でした。4月より独立し、その環境を卒業した次第。

折しも「らんまん」に出合い、雷に打たれっぱなし。好奇心旺盛でどこまでも突き抜けていくのが万太郎が万太郎たる所以。

ドラマを見るたびに勇気付けられて涙し、今一度「新海桂子」を磨き直して、「ほんまもんの私のまま」で生きていこうと誓う毎日です。

思い返せば、よく泣いた子ども時代です。
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