のみのおもてなし 世界に大きな虹の架け橋を

みなさま、お元気でしたか?あっという間のようでいて、長く濃密だった8月が間もなく暮れゆきます。今日は折しもご褒美のような満月が上がります。1年で一番大きな満月(スーパームーン)であり、月に二度目の満月(ブルームーン)。大変珍しい天文現象で、前回は2009年、次回は2037年なのですって。さて、今宵はどんな月が見えるでしょうか?どうぞ、おしあわせなひと時でありますように。スーパーブルームーンに寄せて、お約束のエッセイをお届けします。

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ボナペティコーポレーション おごっそうの玉手箱ogotamaの代表商品が「のみのおもてなし」です。

この名には私の”大願”が込められています。不思議なご縁に導かれ、2006年10月、甲府にある(株)東京ガス(当時。現在は東京ガス山梨)にて、料理教室オープニングスタッフとして勤務することになりました。

理解のある上司に出会い、わずか私の道が拓けました

子ども時代からずっと好きであり続けた世界の料理やお菓子、20代より目指してきた「空気の流れる本のようなおもてなし」、30代で出合った「山梨のおごっそう」を掛け合わせ、お客様に発信していくことが出来る大変魅力的な仕事でした。本社の専門スタッフが次々に企画する料理教室は大変充実していました。都内でレクチャーを受けた後、インストラクターとして甲府市北口にあるクッキングスクールでレクチャーします。ガスの大切さ、ひいては「火」の大切さを伝えます。幸運なことに、オリジナル教室も持たせてもらい、それを「のみのおもてなし」と名付けて季節の料理教室を隔月で開催しました。

私のごく身近な人は、私が一つのことしか出来ないことをよく知っています。例えばご飯を食べるとき。初めに「いただきます」と手を合わせるのは、皆と同時です。皆は会話しながら、ごく自然に食べ進めて食事時間を終えます。私はというと、「食べる」「話す」の同時進行は出来ません。食べるなら、食べることに全神経を集中して五感で味わう。話すなら、話すことに集中。それは生まれつきの習性。母親に「(おしゃべりばかりで)箸が止まっているよ。」と言われたものですが、今も寸分たがわず。久しぶりに再会した親友から「(積もる話は途切れないけど)まぁ、同時にビールも飲もうよ。」てな具合です。

食卓に「奇跡」がのっているのに、どうして人は、それをゆっくりと愛でないのだろう。食べながらおしゃべりして、テレビも観て、スマートフォンもチェックして・・・、4つも同時進行させてあっという間に食事時間を終えてしまう、そちらの方が摩訶不思議。私には、逆立ちしても実現不可能なこと。一つ一つどれもじっくりと堪能せずにいられない私は、すなわち人の4倍も時間がかかってしまうのです。「シンカイケイコ50時間あってようやく人並み」の所以です。

前置きが長くなりました。このような私ですが、料理教室の師範台に立ち、「時間内にお客様に説明しながら料理を作る」という複雑な同時進行が特技です。今日の日のために用意された食材を次々に調理して変化させ、最後お膳にちんまりとおさめて「さあ、どうぞ。お楽しみ下さい。(ヴォアララ、ボナペティ!)」と言う瞬間は最上の喜びです。

あれもこれもと欲張らない。今、ここにある季節の食材に手をかけ、知恵にいたずら心を忍ばせ、どこにもないここだけの唯一無二の料理を作る、それ「のみ」を楽しむ。

食材の入手に始まり、召し上がる方の今日の様子にぴったりのお料理を提供すること。その出来上がっていく過程の全てを含め、それを「のみのおもてなし」と名付けました。

その名の発端は16歳の頃に出合ったチャップリンの「ライムライト」によります。(その当時、よく深夜テレビで古い映画が放映されていました。ライムライトは私の大好きな映画Best10!いつか映画の話しもいたしましょう!)

チャップリンは老いぼれた喜劇俳優。ある時、自殺を図ろうとしたうら若き女性に遭遇し、彼女を助け、自宅に寄せて介抱します。女性は失意のどん底にあるバレーリーナー。彼は彼女を笑わせたくて、昼夜分かたずいつも冗談を言って彼女の凍った心を溶かしていくのです。徐々に彼女が笑いを取り戻して再び踊ることをこころざし、彼は一層奮起して彼女を笑わせて励まし、愛おしい存在になっていく。そこに若き駆け出しの作曲家が登場。2人の小さなロマンスが生まれ、若者らが眩しいほどに芽をぐんぐん伸ばしていく・・・。灯火が消える寸前の老俳優に舞台のチャンスが訪れます。サクラで集められた観客とは露知らず、彼は偽笑いにのって、生粋のコメディアン精神が再燃、本気になって観客を笑わせます。会場が沸くこと熱湯のごとし。絶頂の中、そこで披露するのが「のみのダンス」です。

老俳優の右手から、左手に、のみが飛ぶ。小さく、時に高く遠くへ。自由に、のびのびと。

愛の力によって、老俳優もまた生きる力を取り戻し、彼らしく眩しいほど最高に輝くのです。それを観る観客達も涙を流しながら心の底から笑い転げるのです。

私も人生、こんな風に生きたい。私にしか出来ない「のみのダンス」を行って、人々をしあわせにしたい!

「食べものを通じて老若男女に体と心の栄養を届けること」が私の「のみのダンス」。それが私の最上のしあわせ。

そんな訳で私の料理教室・ワークショップを「のみのおもてなし」と名付けました。

ほ~んのわずか、分かっていただけたかな?

まぁ、かくかくしかじか・・・は読み流して下さい。とにかく、ほんのちょっとの「小さなおもてなし」。

ここにあるものを掛け合わせて、世界にたった一つの唯一無二のご馳走を作ること、それが「のみのおもてなし」。作りながら、なんだかウキウキ、わくわく、どきどきして、あぁ、五感フル稼働の料理って楽しいな。

いのちの循環に触れながら過ごし、最後お皿をピカピカに磨き終えた時、「あぁ、私もいのち。」と自分が愛おしくなるような、そんな時間を目指しています。

追記です。私は昔取った杵柄でチェロが大好き。世界的に活躍するヨー・ヨーマを敬愛しています。随分昔、インタビューに英語で答える姿をテレビで観ました。英語は全く得意でないのですが、その時の彼の英語はばっちり理解できました。

「私はチェロを弾くことで世界に大きな虹を次々にかけていきたい」とニコニコしながら答えました。

感化されやすい私です。私も「のみのおもてなし」で世界に大きな虹を次々にかけていきたいと思います♪この「のみのライブ」を一生続けていきたいと願っています。

2023年葉月晦日、二度目の満月に大願をかけて。

ボナペティコーポレーションogotama代表  食べもの研究家 新海 桂子

※ただ今、スタッフ大募集中!末永く、一緒に虹かけをして下さる方を探しています。「ぜひ我こそ!」と思われた方は、お問い合わせページにご連絡ください。心よりお待ちしております♪

「おごっそうの玉手箱」の連載を終え、一世一代の晴れ舞台”おご玉展”を企画しました。当日、連載紙面100回分の掲示予定が、あれもこれもと1人で欲張って、2割弱となってしまった人生最大の汚点日に。それでも最強スタッフや、愛のあるお客様、家族に囲まれ、最高に幸せな時間を過ごしました。お世話になった皆々様、どうもありがとうございました‼いつか必ずリベンジします。どうかその時までお元気で、また集って下さいませ。

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