食べもの研究家しんかいけいこ②

お勤めの最後は「こども園」。保育士として5年間働く中、子ども達に「センスオブワンダー」*の目を蘇らせてもらいました。同時に「保育」の奥深さに触れ、本物のプロとして幼児教育の初めの1歩を踏み出すことが出来ました。

人間を超えた存在を認識し、おそれ、驚嘆する感性をはぐくみ強めていくことには、どのような意義があるのでしょうか。自然界を探検することは、貴重な子ども時代を過ごす愉快で楽しい方法のひとつにすぎないのでしょうか。それとも、もっと深いなにかがあるのでしょうか。わたしはそのなかに、永続的で意義深い何かがあると信じています.地球の美しさと神秘を感じ取れる人は、科学者であろうとなかろうと、人生に飽きて疲れたり、孤独にさいなまるることはけっしてないでしょう。たとえ生活のなかで苦しみや心配ごとにであったとしても、かならずや、内面的な満足感と、生きていることへの新たなよろこびへ通ずる小道を見つけだすことができると信じます。地球の美しさについて深く思いをめぐらせる人は、生命の終わりの瞬間まで、生き生きとした精神力をたもちつづけることができるでしょう。 (本文まま)

1日の中、春夏秋冬の小さなリズムがありました。日が昇ったばかりの清らかな早朝の園庭で、いつものように電線に鳥のつがいが止まり来て、さえずる様子はまるで楽譜みたいだね、と始まり、おままごとの中で泥団子を青葉でまいて桜餅、落ち葉を何枚も棒に刺して火にくべているつもりで焼き芋、氷のアイスキャンディー、どんぐりの誕生日ケーキ等々・・・、給食後に一緒に絵本を読んで、お昼寝。起きたらおやつを食べ、また自由遊び。生活の中に遊びがあり、遊びを通じて身体能力を次々に獲得し、生きる力を蓄えていくのです。同時にイマジネーションを膨らませ、その人独自の感性が磨かれていく様子を目の当たりにしました。

在職中、沢山の研修を受けて「保育」の奥深さに魅了されていきました。中でも特別に印象に残っている二つの教えがあります。

一つは都内のフレーベル幼稚園・園長先生の教えです。就職して2年目に入ったばかりに受けた研修で、私の保育の心の支えとなりました。

【やっとお座りが出来るようになったばかりのおもちゃを持った赤ちゃんの真正面、手の届く位置に保育士がいる】、そんな1枚の写真が提示され、「彼女は新人保育士です。何が足りないでしょう?みなさん、どこがいけないか分かりますか?」と尋ねました。

その園では定期的な園内研修で、皆で保育現場の写真を振り返りながら、保育のあり方についてブラッシュアップしているそう。ベテラン保育士が指摘しました。「座る位置が違うよ」と。

その園長先生は、静かに語り進めます。「これはですね、今、赤ちゃんがおもちゃと出合っている時なのです。これは赤ちゃんとおもちゃだけの、誰にも邪魔されてはならぬ神聖な時なのです。だから保育者は赤ちゃんの目に入らぬように斜め後ろに座って控え、その出会いの時をそっと見守る、それが保育なのですよ」と。

もうひとつは3年目秋頃だったでしょうか。特殊な経歴から幼稚園の園長先生となった男性の、聞くもワクワクするお話でした(たぶん神奈川県横浜市)。園の沢山の事例を通じ、自分の目指す保育を見出すことが出来ました。最後の言葉がとても印象的でした。「保育とは、その時、子ども達が最大限楽しめる縦と横の空間を区切ってあげ、その中で思う存分子ども達に体験させてあげることだと思います」と。私の心に青空が広がって虹がかかりました。

祖父の件の追記です。大人になってご縁あり、子ども等と接することが多い私ですが、「私は決しておじいちゃんのようなやり方はしない」と心に誓っています。社会で生きていくにはマナーは大切、必要不可欠です。でも恐怖によって身を正すものではないし、周りから自分がどう見られるか、恥ずかしくないかと気にして身を正すのは不自然で、とても窮屈で息が出来ないように思うのです。

社会人生活で上司・同僚・後輩、利用者様(高齢者、料理教室のお客様、子ども等・・・)の多くの皆様に出会い、沢山の学びを授けていただき、我が血肉となりました。心より感謝申し上げます。

それら全ての学びがあって遅ればせながら54歳にして新生”食べもの研究家” 新海桂子が誕生しました。

私のやり方は、言うなれば、「アヒムサ」でしょうか。食卓に上った全てのものごとは奇跡の連続の上にそこにあるのだと思います。関わった人はもちろん、食材、食器、そして自分自身にも・・・。この世で当たり前のことは何一つないのですから。

この奇跡に感謝して、子どもも大人も安心/安全な空間の中、ogotama料理教室や季節のワークショップ、執筆活動&朗読、商品開発等を通じて「からだと心の栄養」を届けて参ります。今後、末永くどうぞよろしくお願い申し上げます。

新米ですが、必要とあらば、どこまでも足を運びます。ご興味のおありの方はお気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。心よりお待ち申し上げております。

ボナペティコーポレーション ogotama 食べもの研究家 新海桂子

※お知らせ①  明日8/24は「たんぽぽ食堂お惣菜デー」、8/25は同食堂において「のみのおもてなし」料理教室を行います。料理教室は現在2~3空席あり。ぜひ合わせてお出かけ下さい。たんぽぽ食堂電話:0551-45-6890(営業時間 11:30~16:00)

※お知らせ② 8月8日から、8月23日まで半月間毎日エッセイをお届けしました。ご愛読どうもありがとうございました。次は満月にエッセイを投稿予定です。それまで皆様、ごきげんよう!どうぞ楽しく、お元気にお過ごし下さい。

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