いのちの星 地球 ogotama Bon apeetit en 2023 ⑦
日暮れ時、心地よい風にふかれ、虫の音を聞きながら、穴山古代蓮池のほとりにてこのエッセイを書いています。二千年の時を経て開いた大賀蓮が揺れる様子を眺めながら、ああ、なんてしあせな時間なのでしょう。
ここに到着したのは18時の鐘が鳴る少し前。令子さんに「食べ頃の蓮の実等」を収穫してもらいました。
私にとって蓮は大好きな花で、ogotama事業〈Food編〉における10大テーマのひとつです。(花はもちろん、葉、茎、実・・・、全部が好き。惚れ込んでいます)
令子さんというのは、恐れ多くも「島津令子さん」のこと。この蓮池を作った故 島津寿秀様(甲州リハビリテーテーショングループ最高顧問)の長女さまであり、故 島津寿宏様(同グループ本部長)の妹様にあたります。
今年6月下旬、北杜市から自宅への帰路、ふと思い立って韮崎市穴山の蓮池と井戸に寄ることにしました。(これは私にとって、穴山の二大穴場です♪)
まずは蓮池へ。日の陰った早朝の短い寄り道のつもりが、入り口に「古代蓮を詠もう」とポスターが貼られ、蓮の絵が描かれたかわいらしいポストが設置されているではありませんか!
「穴山町俳句コンテスト」なるものに、私も挑戦することにいたしました。一人3句まで、期間は7月下旬までとあります。ならば今日、7月中旬、下旬と3回足を運んで詠もうと張り切って挑みました。
いつもなら蓮を見ながらうっとりと過ごす時間が、その日は頭の中の蓮を言葉にするので精一杯。なぜなら、この蓮池は私にとって「特別に思い入れのある場所」なのですから。無い頭をフル稼働させ、蓮に今の自分の思いをのせていざポストへ。
次は水汲みへ、と足早に車に戻りながら自分の句を振り返りました。「全く俳句の手ほどきがなく、”The駄作”だな。でも、蓮に自分の今を重ねられたので自分的には大満足。蓮へのラブレターが書けた!」と一人悦に入りながら、その句をそらんじてみたところ・・・、あれ?こりゃだめだ。いつの間にか五・五・五になっていたではありませんか‼
出勤したばかりの男性スタッフに交渉し、ポストから取り出す許可を取り付けて二文字を補いました。そうこうしているとスタッフは4~5人と次々に増え、テント下に蓮のクッキーや、新鮮野菜が並んで朝市さながらに。
お財布を取りに車へ。その日もまた車への往復を繰り返し、どんどん時間が過ぎていきます。
野菜を買った後、スタッフの方に、自分がこの蓮池を大好きなこと、蓮に興味があって商品開発してみたいことなどを伝えました。「ならば、ここの責任者を。この蓮池の持ち主だよ。」と、スタッフの中から令子さんをご紹介下さいました。
「私、新海桂子と申します。老人保健施設協議会会長 島津寿宏さんの呼びかけがきっかけで2004年に『おばあやんのおごっそう』を作った者です。それがきっかけで、山梨日日新聞で連載することになって『おごっそうの玉手箱』に発展し、今春起業したばかりなのです‼」と熱く自己紹介。令子さんはクリクリの目をさらにまん丸にして頷きながら私の話を聞いて下さいました。
その後、ドタバタして二度目に伺ったのは7月22日。なんと前日にコンテストは終了していました
。でもその代わりに令子さんのご厚意でお仏前にご挨拶し、島津寿宏様に「おばあやんのおごっそう」をお見せすることが出来ました。それは私の今世では叶えられぬ念願だったのですが、形を変えて実現した「奇跡の日」となりました。ここに再びたどり着くまで、随分寄り道しながら沢山の失敗をしてきました。でも、失敗があったからこそ、こんな風に「ここ」に到着出来ました。
そして今日8月10日。蓮の商品開発を目的に、蓮各部を収穫していただいた次第
令子さんに出会うことが出来た奇跡を、何といいましょう!ただ今、忘れがたき2023年夏まっただ中を過ごしています(先のエッセイに記した「人生を振り返ったとき3本の指に入る~」のくだりを「4本」に訂正せねば!)。いまエネルギーを燃やさずして、いつがんばるのでしょう。私にとっては、今がその時。今、私は燃えています。
初めて見上げる夜空には、驚くほどの星の数。静かに優しく煌めいています。ずっとここに居て、朝を迎えたい。
「令子さんにお願いして、来年はテントを張らせてもらおうかしら。早朝、甘い香りに包まれながら蓮の開く様を見ててみたい。本当にポンッと音がするのかしら・・・」そんなことを夢想しながら、しあわせな時間がさらさらと過ぎていきます。
満ち足りた時に感謝しながら、そろそろ帰途につきたいと思います。2023.08.10 晩に