続・おごっそうの玉手箱② 山本初子さんをお訪ねして
ついに、2023年大晦日を迎えました。心穏やかに、体健やかに、良き締めくくりの1日をお過ごし下さい。
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私は、来年の嬉しい約束を取り付けました♪
年の瀬、山梨県甲斐市吉沢に住む山本初子さんを訪ねました。初子さんに出会ったのは11年前。懇意にしている五味醤油(甲府市城東)の五味雅子さんからお母様をご紹介いただき、「おごっそうの玉手箱」の第2回目に「やこめ」を取材させていただきました。
その後、訪れる度に食卓に季節のおかずを並べて温かなおもてなしをして下さり、食卓に欠くことがないのが煮豆。うずら豆や、金時豆、五目豆などが折々に並びます。「初子さんは、本当にマメですね。どうしたらこのように美味しい豆が炊けるのですか?」と尋ねる私に、「コツというほどじゃないけど、豆は肝長でないと炊けないよ」と初子さん。肝長とは、焦ることなく、気長に長い時間をかけられること。十分な時間をかけて豆をもどし、弱火でじっくりコトコト煮て、程よく優しい甘みに炊き上げること。それを気負わず日常生活の中に取り入れて行ってゆくこと。
慌ただしい毎日の中、つい次へ次へと急いてしまう肝の短い私に、”豆炊きの豊かな時間”を教えてくれたその人こそが初子さんです。
当日はサプライズでご近所に住む窪寺紀代子さんも駆けつけてくれました。紀代子さんは第78回目に「小麦まんじゅう」を教えて下さった方。なんと、嬉しいことに同様の小麦まんじゅうを蒸かして持ってきてくれたではありませんか!
「あれからあっという間に月日が経ってしまったね。嬉しいことも、悲しいことも色々あったよね。」「今日はひと足先にお正月が来たね!」と、きゃっきゃ言いながら、久しぶりに顔を合わせて女子会を楽しんだ3人。
ただ今、初子さんは御年91歳。先日、腰を痛めてしまったとのこと、立ち上がるのがやや難儀な様子でしたが、それ以外はピンピンしており、変わらずちょっと早口で淀みなく語ります。途中、台所に立って、手作りこんにゃくを切ってくれました。「初子さん、来年こそはこんにゃくの作り方を教えて下さいね」と我々が頼むと、「もちろん!」と力強く返事をしてくれた後、ぺたりと床の上にしゃがみ込んでしまいました。「もしかして立ちくらみがしたのかしら、腰が痛くなって立っていられなくなったのかしら?」とさぞかし心配して初子さんの様子をそっと見守っていると、よっこらしょと床下収納のふたを開け、「先日、富士川町の道の駅でいいこんにゃく玉を見つけ、買っておいたの」と嬉々として取り出しました。一同破顔一笑。「年が明けたら、また集ってこんにゃく作りをしようね!」と元気に約束して、お開きとなりました。
来年は、一つでも多く、初子さんのお料理を聞き取って、後生に残したいと思っています。また、かつての伝承者の方々や、新たな方々にも出会い、精力的に伝統食の聞き書きを動画配して参ります。季節折々に伝統食のワークショップも開催予定です。
どうぞお楽しみにご愛読いただき、一緒に手を動かして伝統食の素晴らしさを体得いただけましたら幸いです。