ogotama食べもの図鑑 1.れんこん・はす

いのちの星 地球 ogotama  Bon apeetit en 2023  付録

レンコン スイレン科ハス属 学名:Melumbo uncifera 多年生水中草木

和名:蓮根(れんこん)、蓮(はす)

別名:藕根 (ぐうこん)

旬:晩秋~冬、寒くなるにつれて風味が濃厚になりホクホク感が増す。煮物、きんぴらなどに。

6~9月の新レンコンは色が白く、はつらつとした食感が魅力。サラダや和え物、揚げ物などに。

花言葉:泥に染まることなく、美しい花を咲かせることから「清らかな心」 

外国語名:lotus root(英)、 racine de lotus(仏)、 raiz de loto(西)、radice di lotus(伊)、lotoswurzel(独)、연근(韓)、藕根(中)、 (ネパール)、koryn lotosa(ウクライナ)、Hoa Sen(ベトナム)

原産と伝播:中国やエジプトなどの湿暖域原産。古くインダス文明(紀元前2600~1800年頃)に作られた母神像の中に蓮の花飾りが使われている。日本へは5世紀頃に伝来。本格的な栽培は明治時代以降。

インド、マカオ、ベトナム 仏教国の国花。

ベトナムでは「赤い蓮」の花をあてている。日本の桜ように、ベトナムで愛されている花。

多くは花が開いた後に実がなるが、はすは花が開くとき、花托に実を含んでいる。花と実が同時という大変珍しい植物。中央の花托のプツプツが雌しべ、花托脇のケバケバが雄しべ。ベトナムではこの雄しべの香りをお茶にうつす。

・仏教で花と言えば、「はす」のこと。お釈迦様がお母さんのお腹に入ったときに蓮の花が咲き、生まれた時には咲いた蓮の花の上に立って第一声をあげたと言われたり、生まれたばかりのお釈迦様が歩いた足跡にそって蓮の花が咲いたという伝説がある。

・成長した花托の穴が蜂の巣に見えることから、昔、日本では「はす」のことを「はちす(蜂巣)」と呼んでいた。いつしか「はちす」が「はす」に転化。

品種

・複数あるが、東日本(主に茨城)では「金澄れんこん」が主力品種。コロンと丸く、別称だるまレンコンとも。西日本では「備中れんこん」。節と節の間が長く、収穫は前者に比べて難儀。シャキッとした中に粘りあり、糸を引く。我が山梨県笛吹市市砂原町ではかつてレンコン産地。土地目を生かして上質のレンコンを栽培していた。主力品種がこの備中れんこん、別称けえりんぼう。収穫がだるまレンコンに比べて非常に難儀、今は作る人はほぼいない。

・地下茎が肥大したものが「レンコン」。主に中国や日本で食用とされる。根はもちろん、節はすりおろして飲用すると喉の痛みを和らげる。

・中央に大きな穴が一つ、周りに9個の穴があるのが一般的。山口県岩国レンコンは、穴が一つ多いと言われる。

・レンコンは根以外、茎にも穴あり、観察すればするほどに不思議な植物。大きな丸い葉っぱの中央には小穴が穴が複数空いており、空気を吸い上げている。これら「穴の理由」は、レンコンの育つ泥の中は空気が少ないので、自身が呼吸をしやするくすため。

・日本ではこの断面の穴が「先を見通す」ことに通じることから、縁起物でおせち料理や、節句料理に欠かせない。

・お皿や、蒸し物の包み紙や、乾燥させてお茶にする。

・ベトナムでは花が開く直前、香りが最高に高まるので花びらを開き、お茶を詰めて再び閉じてひもで縛り、お茶にハス香に移して花茶を作る。

・食器レンゲは蓮の花(蓮花れんげ)を模したもの。散った花の一片に似ることから「散りれんげ」→「れんげ」に。

青い実

・お盆の頃に出来る青い実は皮をむき、中の胚乳を生のまま食べる。上品な甘みがナッツのよう。皮ごとゆでて皮をむいていただくと、ポクポクしてまるで空豆に似たふくよかな味わい。2016年暮れに取材させていただいた笛吹市石和町の雨宮照子さん(故)は「年寄りが食べる度に寿命が延びると言いながら食べていたよ」と話してくれた。

・蓮の実は固い殻に包まれ、容易に芽を出さず。種皮の一部をやすりなどで傷つけて田んぼの土の中に植えると、種レンコンよりずっと小さな葉が何枚も出る。秋になるとミニレンコンが出来る。たくさんの種子をまいておくと、大小様々な形のミニレンコンが出来る。

大賀蓮のこと

蓮の実は固い殻に包まれ、容易に芽を出しません。レンコンは根と種の二つの方法で生き延びます。通常は根を伸ばして増えていくのですが、病害虫の大発生、突然水が無くなる等の環境変化で根が耐えてしまうことがあります。その時、いのちを繋ぐのが、この固い殻に包まれた実です。いつの日か条件が揃った時に芽を出し、そして花開く時を夢見て休眠しています。

1951年大賀一郎博士は千葉県千葉市の落合遺跡の中から「蓮の果托」が出土したと聞き、実も出土するに違いないと3月3日調査を始めました。すぐに見つかると思いきや叶わず、ついに調査打ち切り前日を迎えました。3月30日、1粒の種が出土。打ち切りを延期して4月6日さらに2粒発見。早速3つの実をまくと、翌年1粒が無事に成長し、その翌年ピンク色の花を咲かせました。実周辺にあった落合遺跡の丸木舟の破片をシカゴ大学に送って年代測定してもらったところ、約2000年前の地層であると推定され、その蓮の実は二千年の時を経て開いたこととなり、博士の名を冠した”大賀蓮”と名付けられました。日本各所に実が譲られて美しい花を次々に咲かせています。

・山梨県では、韮崎市穴山が「大賀蓮」の名所として知られる。「穴山 花の谷 大賀蓮」は島津氏のご厚意により、一般公開されている。一年中、有志によって細やかに手入れされ、蓮の時期はコンサートを催したり、朝市が開かれて賑わっている。近年は俳句コンテストが行われ、毎年競い合って美しい句が誕生している。

参考文献:・レンコンの絵本 尾崎 行生編・ささめや ゆき絵(農文教)、食材図典 生鮮食材篇・地産食材篇(小学館)、まるごといつもの食材(学研)、まるごと日本の季節(学研)、おごっそうの玉手箱 99「石和のレンコン」 

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