大きな太鼓腹と、福耳は、まるで布袋様。私の人生に、二度福を分けていただいた。
いずれも経済的に困窮していた時期、窮地を救うように手を差し伸べてくれた方。
一度目は高齢者施設、二度目は保育園で栄養士として採用してくれた。
ハカイダー*に述べたように、周囲とうまくいかず自分を押し殺して迷走していた期間が長かった私。がんばっているつもりが、意図せず調和を乱して波乱を巻き起こしてしまう。
ある年の暮れ、高齢者施設の投書箱に一通の手紙が届いた。「全てに感謝しているが、この施設に於いて栄養士だけは不適である。即刻辞めさせるべきだ」と家族を装った苦情が寄せられた。
長である布袋様は私に言った。「新海、これはいたずらだ。でも相当に憎まれているな。いいか、心を静めてよ~く聞いておけ。身を振り返って直せるところを直し、今後生きていきなさい。」そして以下、話し始めた。
自分の周りには、10人の人がいると心得なさい。1人はあなたを大切に思って、いつも応援してくれる人。2人目はあなたを大切に思うからこそ、心配して反対する人。3人目はあなたが憎くて反対する人。4人目はあなたの「すること」に賛同して応援する人、5人目はあなたの「すること」に不本意で反対する人。
この5人が肝心だ。応援する2人を離さず、いかに惹きつけておくか、また反対する3人をいかに説得して見方にするか。
残りの5人は、最初の5人の動向で、どちらにも動く。だからまず、その5人を大事にして心を掴んで関係を築きなさいー。
時を経て、二度目の保育園でも事件は起きた。給食室を管理する立場のはずが、またしても未熟ゆえ5人にそっぽを向かれ、職場から押し出されてしまった。
三度目の正直。今度こそ、失敗しない。今まで長いこと、周りに迷惑をかけたくなくて、周囲を傷つけたくなくて、誰かのため、何かのために、一生懸命に自分を押し殺して生きてきたのだけれど、そもそもそこに「私」は居なかった。それこそ自分が無自覚に問題を生み出していた”根本的な原因”。
偶然のような奇跡が重なって自分がこの世に生をうけたのだから、もう隠さない。自分の人生の主人公は紛れもなく「この私」。唯一無二の私を大切に、磨きをかけていこうと誓って独立した。
そして周りの10人を今度こそ大事にして、対話を重ねながら共に生きていこうと思う。
どうかあなたも、あなたのままで。苦虫をつぶしたような顔はやめて笑ってみて下さい。心ない言葉で隣人や物事に文句を重ね、ひいては自分を傷つけるのではなく、どうか愛のこもった優しい言葉をかけてあげてください。そうしたらもうちょっとだけ、優しい気持ちになって心に平安が訪れるのだと思う。
どうか今日を良い1日にしてください。
私も気負わず、肩の力を抜いてゆるゆるがんばります!
人生終わりまで稽古なり。遠回りしたからこそ、今直進する桂子より。